これが新時代のコーチング?! ~横浜エクセレンス12連勝を支えるもの~
個性的なリーグに成長したB.LEAGUE
B.LEAGUEが10シーズン目を折り返した。
ここまでの歩みは大成功と言っていいだろう。世界2位のリーグという当初は大風呂敷に聞こえた目標も、最早笑う者はいなくなった。
B.LEAGUEが成長するにつけ、その個性も際立ってきたように思う。
60試合という試合数をこなすために毎週バック・トゥ・バックで試合が行われる。さらに水曜ゲームを挟む週もあることを考えると、日程のタフさで言えばすでに世界2位である。
世界で一番タフなスケジュールなのはシーズン82試合に加え、より過酷なフォーマットのプレーオフが設定されているNBAだろう。しかし、NBAではシーズン中は全力を出さないことがままある。
例えば、大差のついた試合では早々に主力を下げて休ませることが多い。そうやって出場時間をコントロールしていないと主力選手のコンディションを維持できないからだ。 勝負の決した試合終盤に主力が下がっている時間帯のことを”Garbage Time”と呼ぶ。直訳するとゴミの時間だから、ひどい言われようだ。
他にも、スケジュールが発表された時点でコーチ陣が負けを覚悟する試合もあるらしい。西海岸の遠征中にロサンゼルスが入っていれば選手たちは遊ぶ。自己責任の国だから、選手たちを縛りつけることはない。しかし、全員が全員節度を保てるわけではないから、前日に遊べば当然勝率は下がる。
私が応援しているメンフィス・グリズリーズもロサンゼルス滞在中にディロン・ブルックス(現フェニックス・サンズ)の誕生日を迎えた年があって、次の試合は盛大に敗けたのを記憶している。”Scheduled Loss”という言い方があるのをこの時に知った。大意としてはカレンダーが発表された時点で予想されていた敗戦、ということになる。
その点、B.LEAGUEでは毎試合全力を出し尽くすことが奨励される。コーチも滅多に”Garbage Time”など作らないし、観客の方もそれを嫌う傾向がある。日程的なタフさで言えばNBAに後れを取るが、試合の内容を含めると案外B.LEAGUEの選手たちの方が消耗しているかも知れない。
体格差の問題から、ビッグマンがほとんど外国籍選手だということ。そして、その外国籍の在籍人数やコートで同時に使える人数に制限があることもB.LEAGUEの個性と言えば個性だ。
日本人ビッグマンの選手層が薄いこともあり、リーグが始まって数年は「帰化選手か竹内兄弟のいるチームしか優勝できない」などと揶揄されることもあった。
今では帰化枠やアジア枠に優秀な選手が増え、リーグ創設当初よりは機会の均等化が進んだ。外国籍の一枠をペリメーターの選手に使うチームが増えたし、その流行を逆手に取った琉球ゴールデンキングスが肉弾バスケで優勝するということもあった。
バスケットボール自体も常に進化を続けているからロスター構成のトレンドは変わっていくだろうが、ビッグマンが外国籍頼りなのはしばらく変わらないだろう。
コーチング・スタイルいろいろ
B.LEAGUEには他にも様々な個性があるが、私が最近最も注目しているのはスタイルの多様性だ。
アメリカならアメリカ、ヨーロッパならヨーロッパ、オセアニアならオセアニアと、それぞれの地域にそれぞれのスタイルがあるものだが、現在のB.LEAGUEにはそれが無い。アメリカン・スタイル、ヨーロピアン・スタイル、オセアニアン・スタイルと異なる個性を持つチームがこれほど混在しているリーグも珍しいのではないだろうか。
読者諸兄もおそらくそれぞれのスタイルにざっくりとした印象を持っていることだろう。例えばこんな具合だ。アメリカ流はピック・アンド・ロールが主体でミスマッチの駆け引きが上手い。ヨーロッパ流はオフボールのスクリーンが多く戦術が緻密だ。オセアニア流はトランジションからボールを止めずに展開を作ることに長けている……。
しかし、私が注目しているのはそういった戦術的なスタイルではない。スタイルはスタイルでもコーチング・スタイルの方だ。
私が聞く限り、アメリカ人のコーチは「コート上で起こったことは選手たちの責任」という考えを持った人が多い。試合前の準備は、もちろんする。スカウティングもすればアクションやセットプレーも用意するが、試合が始まってから何を選択するか、相手の対応に対してどのオプションを使うかは選手たちに考えさせる。おおよそそんな考え方のようだ。