動く箱で泊まる ── B革新時代の取材出張
タイヤのついた箱と、ある思いつき
かれこれ一時間、私は箱の中にいる。
箱にはタイヤがついていて、周りの車に紛れて高速道路を進んでいる。すまし顔でさも自分も車であるかのように振舞っているが、やはり箱だ。
その証拠に加速はしないしカーブは曲がれない。設計上、ドライブの醍醐味を放棄している。
箱の名を、ハイエースと言う。
その前はマツダのアテンザというステーションワゴンに乗っていた。アテンザは車幅がある上に、私はルーフボックスも取り付けていたので、前に乗っていたアクセラと比べると走らなかったが、それでもまだ車だった。
ハイエースの走りは歴代マイカーの中で最低を通り越しており、私はタイヤのついた箱だと思うことにしたのだ。
箱だと思えば有用に感じられてくる。キャンプ道具を詰め込んで、さらにキャディバッグやカメラ道具を積んでも余裕のある荷室。二列シートには最大で5人乗れる。
これだけの巨大な箱が移動までできると考えたらお得ではないか。物は考えようというやつだ。
この動く箱の利点を生かしたある計画を思いつき、それを実行に移したというのが今回の闇鍋の具材である。
B革新により、来季はBリーグの制度が大幅に変わる。
変わるものの一つに、日程がある。Bプレミア限定だが、名物だった毎週末のバック・トゥ・バックが大幅に減り、平日開催に分散されるようになった。
バスケットボール選手の大怪我が増えている。これは日本に限らず世界中で起きている現象で、おそらくゲームの進化が人体の限界を超えたことが要因だと私は考えている。連戦を減らすことで選手の体の負担を減らすというのは、素晴らしいアイデアだ。
ところが、この日程変更は良いこと尽くめではない。一度の設営で一試合しかできないのであればチームの経費は増えるだろう。アウェイファンも折角遠征したのに一試合しか観られないというのはいかにも残念だ。
我々メディアも同様で、例えば『ダブドリ』で連載している「Grind」では一話分を書くのに最低三度は仙台へ行き、六試合分取材していた。来季以降同じ六試合をキープするには、六度仙台へ行かなくてはならなくなる。
どうにかして経費の増加を食い止めることはできないだろうか。そんなことを考えていた時に思いついたのが、車中泊での出張である。
例えばナイナーズの試合が仙台と宇都宮のような比較的近場で予定されていて、間に中日があるとしよう。中日に帰宅して、宇都宮戦に合わせて再度新幹線に乗るというのはどうにも間抜けだ。かと言って、ホテルに連泊するのも気が引ける。
これが車中泊ならどうだろう。車で仙台に行き、取材後に車中泊する。翌日宇都宮に移動してもう一泊。宇都宮戦の時間次第では三日目はその日のうちに家に帰ることができるのだ。
思いついてしまったからにはプレミア開幕まで待つことはない。
5月8日の午前11時過ぎ、私は愛車、もとい愛箱に乗り込んだ。