8人では足りない。プレーオフの勝敗を分ける「9番目の男」の物語

おはようございます。今週の闇鍋をお届けします。めちゃくちゃ油断して、サポメン用記事を最終週に残してしまいました。危ない危ない。サポメン用だけどいつも通り大体読めます。オチが気になってしまったそこの貴方はサポメン・ウェルカムです。感想はXのタグ付きポストにてお待ちしています。それでは皆さん、よい週末を!
大柴壮平 2026.04.25
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「別のスポーツ」へと変貌するプレーオフ

NBAのプレーオフが始まった。

待ちに待った、というのはありきたりなフレーズだが、今季ほどこの言葉が相応しいシーズンもないだろう。

なにせ今季はドラフトの順位を上げるためにわざと負ける、いわゆるタンク行為が例年以上に横行していた。辛かったのは私が応援するメンフィス・グリズリーズが最も悪質だったことで、最終盤は一人も本契約の選手を使わずに無理矢理試合をしていた。

20年以上グリズリーズのファンをやっている私ですら、まともに試合を観る気が起きなかった。それほど酷かった。

そんなわけで、今季に限ってはプレーオフにグリズリーズがいない寂しさより、ようやく本物のバスケットボールが観られるという喜びの方が勝っている。

ところで、NBAではよくレギュラーシーズンとプレーオフは別のスポーツだと形容される。

理由はひとつではない。

まず、NBAで本格的なスカウティングとアジャストメントの応酬が始まるのはプレーオフ以降だ。Bリーグより長めの4戦先勝ということもあり、戦術的な遣り合いに見ごたえがあることも多い。

高い精度で戦術が遂行されるおかげでペースが下がるのもプレーオフの特徴だろう。プレーオフでは簡単に走らせてはくれない。ユーロファウルなども徹底される。

インテンシティの高さの違いもよく挙がる。負けたら終わりという状況下で、選手たちはレギュラーシーズンとは比べ物にならない強度のプレーを見せる。

その結果として、笛が重くなる傾向がプレーオフにはある。レギュラーシーズンの基準で笛を吹いていたら退場者が続出するので、ある程度フィジカルなプレーを許容する必要があるからだ。

各チームがローテーションを絞るというのもプレーオフの特徴と言える。長丁場のレギュラーシーズンでは疲労のコントロールが大事だ。毎試合エースを40分使った結果負傷してしまいました、が最もやってはいけないシーズンの戦い方だ。しかし、短期決戦のプレーオフでは優先順位が変わる。理想的ではないが、多少無理をしてでも目の前の一勝を掴みにいくという気持ちが、コーチにも選手にもある。

とは言え、ローテを絞り過ぎてもダメだ。途中でガス欠しては優勝にたどりつくことはできない。そこで現在はこんな定説が信じられている。

優勝するにはプレーオフで戦える選手が最低でも8人は必要、とする説だ。

マジックナンバーは「8」。だが、それだけで勝てるほど甘くはない

2023年のデンバー・ナゲッツはヨキッチ、マレー、ゴードン、MPJ、KCP、ブルース・ブラウン、グリーン、クリスチャン・ブラウンの8人ローテでリーグを制した。

しかし、そのオフにKCPとブルース・ブラウンを失って以降の2シーズンはプレーオフで戦える8人を揃えることができなかった。定説通りなら、キャメロン・ジョンソンを獲得してブルース・ブラウンが復帰した今季は3シーズン振りに優勝を狙う資格があるということになる。

マジックナンバーは8だ。

ただし、この定説には8という数字以上に重要なものが隠れている。それは、「最低でも」という一節だ。

人員が欠ける可能性はいくらでもある。ご存知の通りバスケットボールには怪我がつきものだ。ファウルトラブルだって起こり得る。

さらに怖いのは、戦術的に無効化されるケースがあることだ。

2022年のメンフィス・グリズリーズは、正センターにスティーブン・アダムスを起用し、アダムスのスクリーン、アシスト、オフェンシブ・リバウンドを存分に活かして快進撃を見せた。ところが、プレーオフのファースト・ラウンドでミネソタ・ティンバーウルブズがそのアダムスを無効化した。アダムスがマッチアップしていたカール・アンソニー・タウンズがスリーポイントを得意としていたこともあり、タウンズのピック・アンド・ポップを多用することでアダムスは得意なドロップ・ディフェンスをすることができなくなり、ゲーム2以降は出番が激減。最終的にはDNPでシリーズを終えることになった。

この時は、控えだったブランドン・クラークがスターターとしてシーズンより10分長くプレーし、プレーオフではローテ外の予定だったゼイビアー・ティルマンSr.が15.9分という短くない時間を繋いだおかげで、なんとかウルブズに勝ち切ることができた。

8はあくまでも最低限の数字であり、層が厚ければ厚いに越したことはないのだ。

昨季NBAを制したオクラホマシティ・サンダーにしても、Bリーグ王者の宇都宮ブレックスにしても、9番手以降にもいい選手がいた。

サンダーだったらウィギンズやジェイウィル、ブレックスなら鵤、竹内で、彼らはメインローテに入ってもプレーできるレベルの選手たちなのだから、両チームが強かったのも宜なるかな、である。

役割に徹するベテランと、殻を破る若手

9番手以降の選手は、年齢層が両極端であることが多いように思う。

ヘッドコーチからしたらその番手にはベテランを置いておきたいだろう。一方で育成したい選手にその枠を使いたいという意向を持つフロントも多いのではないだろうか。

ベテランの良さは、自分の役割をわかっていることだ。

B1昇格を果たした2022年の仙台89ERSには10番手と11番手に寒竹隼人と荒尾岳がいた。

寒竹は長身かつクイックリリースが武器のシューターだ。この年は不調だったが、それでも打てるチャンスが来たらショットを打ち切った。打ち切ることでスペースを拡げるのが自分の仕事だということを完璧に理解していたのだ。

荒尾の働きも渋かった。元来ディフェンシブな日本人ビッグマンだが、ポストで少しでも相手のプレーを遅らせる、ボックスアウトで相手を飛ばせない、といった地道な作業に体を張り続けた。

外国籍とマッチアップする荒尾はもちろん、横幅が無い上にラテラルのアジリティに欠ける寒竹もディフェンスでは賢くファウルを使うことで穴を作らなかった。自分たちの仕事はミニッツを埋めること。パーソナルファウルがかさんでも構わない。フリースローに繋がらないようなファウルなら積極的に使おう。どちらもそんな考え方でプレーしていたように思う。

一方、若手の良さは真逆だ。ミスを恐れぬ思い切りのいいプレーがチームに勢いを与えることがある。

2015年のポートランド・トレイルブレイザーズは、シーズン終盤に当時リーグ最高の3&Dという呼び声も高かったウェズリー・マシューズを怪我で失った。チームにとってはピンチだったが、そこでステップアップした選手がいた。若かりし日のCJマッカラムだ。

マッカラムは巡ってきた機会を逃さなかった。アグレッシブに得点を重ねてシーズンの最後の最後でメインローテ入り。プレーオフ・ファーストラウンドではシーズン平均の倍以上のミニッツをプレーし、なんとチームで三番目に高い平均17.0点を記録した。

シリーズは1勝4敗でグリズリーズに敗退したものの、最終戦でマッカラムは33得点という圧巻のパフォーマンスを見せた。その後マッカラムはデイミアン・リラードの相棒としてチームの顔となっていくのだが、その足掛かりはあの2015年のプレーオフだった。

異能のベテラン・小林大祐。横浜エクセレンスを救った「予言」とエゴ

ベテラン、若手にそれぞれの良さがあると書いたが、実は去年、私はそのどちらの良さも兼ね備えた珍しい事例を目撃している。

結果的にラストイヤーとなった、当時横浜エクセレンスでプレーしていた小林大祐の話だ。

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