拝啓 Bリーグファンの皆様、サラリーキャップのある世界へようこそ

おはようございます。今週は主にBリーグファンの方向けですが、NBAと比較しながら書いたので、NBAファンの皆さんにも読んでいただけたら幸いです。書き終わった後にベンドラメ礼生選手が別の視点から問題提起していたので、そちらについてもいずれ筆を取ろうと思っています。面白かったという方は是非拡散していただけると助かります。
大柴壮平 2026.03.07
読者限定

サラリーキャップの話をしよう

先日ダブドリvol.27の表紙の撮影に立ち会ってきた。

vol.27は四月末頃の発売を予定している。つまり、現行のBリーグでは最後の巻ということになる。

昨年のようにオフにWリーグ特集号を発刊するかどうかはまだ決まっていないが、vol.28か遅くともvol.29にはBプレミアをメインで扱い始めるはずだ。

vol.27の別の取材で印象に残っている言葉がある。

「プレミアになったら日本人がほぼ出られないかもしれないし、やってみるまでどうなるかわかりません」

Bプレミアではさまざまなルールが変わる。選手側には少なからず不安な気持ちがあるようだ。それはファンにしても同じだろう。

そこで今週は、Bプレミアで新たに導入される制度の一つであるサラリーキャップについて、Bリーグファンが知っておくべきことを書いてみようと思い立った。知識があれば余計な不安も取り除かれようというものだ。

ご存知の通り、NBAでは随分前からサラリーキャップが導入されている。サラリーキャップのある世界ではどのような力学で物事が動くのか。それを知るにはNBAから学ぶのが手っ取り早い。

ちょうどいいタイミングで、その説明に打ってつけの事案が起きた。メンフィス・グリズリーズの解体だ。

2018年にジャレン・ジャクソンJr.を、2019年にジャ・モラントをドラフトしたグリズリーズは順調に成長し、2021-22シーズンにピークを迎えた。後にその年の王者となるゴールデンステート・ウォリアーズにプレーオフで敗れはしたものの、その年の躍進はリーグに大きなインパクトを残した。モラントは次のNBAの顔として扱われたし、グリズリーズは優勝候補の一角と目されるようになった。

ところが、ピークからわずか3シーズン半でフロントはチームの解体と再建を選んだ。

Bリーグで例えるなら、富永啓生とジャリル・オカフォーを獲得してフランチャイズ史上初のCS出場に近づいているレバンガ北海道が、2029-30シーズンには解体に着手しているようなものだ。

不可思議だと思われるだろうが、NBAではこんなことがしょっちゅう起こる。そしてその理由は往々にしてサラリーキャップなのだ。

勢力均衡の裏側で起きること

改めて確認しておくと、サラリーキャップとは選手の人件費に上限を設ける制度のことで、Bプレミアでは8億円に設定されている。スター条項という特例も用意されているが、本稿には関係が無いのでここでは説明を省く。

この制度の目的は、高給取りのスター選手を分散させ、リーグに勢力均衡をもたらすことだ。例えば富樫勇樹、渡邊雄太、原修太、金近廉と4人の日本代表選手を抱えている千葉ジェッツは、いずれ厳しい選択を迫られることになるだろう。

また、他チームの主力を容赦なく引き抜いて強豪の座に昇りつめた群馬クレインサンダーズのようなチーム作りも、今後はできなくなる。

当該チームのファンの皆さんにとっては面白くないだろうが、これまで予算規模で明らかに劣っていたチームのファンにとっては朗報だ。

いい選手が各チームに散ることで、より競争的なリーグになる。素晴らしいことではないか。そんな理解をしているファンが多いのではないだろうか。

その理解は半分正しい。半分と書いたのは、サラリーキャップ導入のもたらす効果には続きがあるからだ。

仮にプレミア初年度に全チームが8億円ピッタリの予算を組んできたとしよう。初年度はそれでいい。もしかしたら2年目も恙ないかもしれない。ところが、3年、4年と時が進むにつれて歪みが生まれてくる。

なぜなら、若手の給与は昇給を前提としているからだ。

去年の夏、宇都宮ブレックスがロスターをほぼ全員残留させたことが話題になった。引退した村岸航の枠に青木ブレイクが加わったのが唯一の変更だった。

現行制度ならば予算さえ確保できれば何度でも全員を残留させることができる。しかし、サラリーキャップのあるBプレミアに移行する来季以降に同じことをするのは、至難の業になるだろう。宇都宮の例で言えば、小川敦也と高島紳司を複数年キープするには大幅な昇給が不可欠だ。

「あいつらの年俸を上げたいから、〇〇歳以上の選手は来季から1,000万円ずつカットでお願い」

で話が済めばいいが、現実的に考えれば年俸カットを飲む選手はいないか、いたとしても少数派だろう。

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