素人からプロの現場へ。私とカメラあれこれ ~ダブドリvol.27発売に寄せて~
カメラ始めました
私がカメラを始めたのはダブドリがきっかけだ。それまでは撮るのも撮られるのも苦手だった。
既刊を読み返すと、2021年4月30日発行のダブドリvol.11で清水隆亮選手を撮影したのが最初のようだ。
当時のダブドリでディレクションが出来るのはデザイナーのトミさんだけだった。トミさんがいない現場ではカメラマンが思いつくままに撮ったものを記事に使っていたのだが、カメラマンのセンスと現場の環境次第で出来不出来に差があった。
ほとんどの現場に帯同していた私がディレクションもやれるようになれば、問題は解決するはずだ。ディレクションをするには、まずはカメラを知らなくてはならない。かくいうわけで、不惑を目前にカメラを買う決意をした。
メーカーはすぐに決まった。ミラーレス一眼に関しては先行していたのと、ダブドリの表紙を撮ってくれている石川元さんが使っていたこともあり、SONYを買うことにした。機種とレンズについては悩んだが、当時仙台89ERSのオフィシャルカメラマンだった堀田祐介さんから、
「ほとんどの仕事はカメラがしてくれるんで、予算内で一番高いものを買えば間違いないですよ」
というアドバイスを受け、α7iiiと単焦点レンズを二つ購入した。
ズームレンズではなく単焦点レンズを選んだのは、「単焦点で撮った方が上達が早い」というネット情報を鵜呑みにしたからなのだが、正直なところ上達が早かったかどうかは全くわからない。
それより何より、購入したレンズのうちの85mmF1.4GMというレンズがポートレートレンズとして優秀だったことが、私自身がカメラマン業を始める後押しとなったように思う。
カメラ購入当初の、知識も技術も無いが、いいカメラといいレンズを所有している、という状況下で私が考えついたのは、最大限にカメラとレンズの性能を活かすという方針で、そこにマッチしたのがこのレンズだったのだ。
一般的に85mmという焦点距離はポートレートに最適だと言われている。その理由は、背景がきれいにボケること、被写体が歪まないこと、適切なコミュニケーションを保ちながら撮れることが挙げられる。
私が最も重宝したのは背景がボケるという特徴で、当時はほとんど全ての写真をF1.4まで開放して撮影していた。背景がボケると被写体が浮き立って見えるので、素人が撮ってもそれなりの画になったのだ。
取材に帯同してはカメラマンの邪魔にならないように自分も撮影する。それを繰り返すうちにトミさんから了承をもらうに至り、自分でも撮影を担当するようになった。
ちなみに始めたての頃の写真ではないが、『楽しまないと もったいない』のカバーは85mmのレンズをF1.4まで開いて撮っている。どこで撮ったかわからない写真を撮ってきてほしいというトミさんのリクエストに応えるために、背景を目一杯ボカす必要があったのだ。時効なのでネタバレすると、これはショッピングモールの駐車場で撮った。
泥沼低迷期
先週のレターで、トゥオマス・イーサローは他競技や読書から受けたインスピレーションをバスケットコートで表現しようと試みる、という話を紹介した。
実はそれを知った時は我が意を得たりという気持ちだった。私も自分の中で似たような方法論を持っていたからだ。
例えば、もし貴方がバスケットボールのライターになりたいとしよう。自分のスタイルを確立するに当たり、第一人者たる宮地陽子さんを参考にするという人は多いだろうが、それでは先が見えている。天井は日本住まいの宮地陽子で、どう足掻いても本家を超えることはできない。
範を求めるなら、他ジャンルのライターや作家にすべきだろう。他ジャンルの記事や創作物で成功した手法なり文体なりが、バスケットボールという分野で新味を出す可能性は多分にある。そこに天井は無い。
だから私は先輩バスケライター諸氏の文章は読むが、執筆の参考にはしない。むしろできるだけ違う視点で物が書けるよう、差別化を図るために読む。
カメラに関しても同様の手法を取った。85mmで撮る写真の出来が安定してきた後に私が参考にしたのは、ファッションの広告写真だった。ファッション広告のような複数のストロボを使った写真を勉強すれば、ダブドリで撮ってくれている他のカメラマンと違った味を出せるだろうと考えたわけだ。
ところが、ストロボの勉強を始めて以降、カメラマン大柴壮平の成長は長い停滞期に入ってしまう。
ファッション・ポートレートに使われている様々な手法を試すものの、誌面になった時に大した違いを生み出せない、という歯がゆい時期が数年単位で続いた。
一度は似たような写真ばかりでデザインをしようがないとトミさんから苦言を呈されたこともあった。

ジェルと呼ばれるカラーフィルターをストロボに装着した。福井ブローウィンズ時代の中原雄さん。

アクリルミラーを使って反射を映した。荒谷裕秀選手。
ようやく自分なりのストロボの使い方が出来上がってきたのが安間志織選手を撮ったダブドリvol.24の前後で、被写体より背景を見てストロボのセッティングを変えるようになってからは随分マシになったと思う。

背景の小窓と目線の高さを合わせることでストロボ光の不自然さを消そうとした。安間志織選手。
ダブドリを始めた頃に元さんから聞いた、
「素人でも偶然いい写真が撮れることはある。狙っていい写真を撮れるのがプロのカメラマン」
という言葉の重みがようやくわかるようになってきたのがその頃のことだった。
撮影を始めてから4年以上が経過していた。
新たなる挑戦
ストロボを使った撮影が形になってきたので、最近私は別の要素を自分の写真に取り入れようと試みている。
いわゆるストリートフォトグラフィというジャンルで、簡潔に言えば街歩きの中で偶然出会った風景にテーマを見つけて撮る、ということになる。
撮影前にセッティングを入念に練るファッションの広告写真とは真逆の手法だ。
