馬の骨の鼻息
ドラマ『夫婦別姓刑事』の騒動をご存知だろうか。
発端は『週刊文春』の、主演佐藤二朗による橋本愛への「爆弾ハラスメント」を告発するという記事だった。
その後佐藤の事務所が反論。フジテレビが声明を出すも、納得のいかなかった佐藤自身がデイリー新潮の取材に応じて、フジ側の弁護士からの言葉が脅しのように聞こえたことなどを明かした。
ネタがネタだけに、佐藤、橋本両俳優のファンだけでなく、フェミニストにアンチポリコレ勢、文春嫌いにフジテレビ・ヘイターが参戦して擁護、批判、論考とさまざまな意見がXに飛び交っている。
私は芸能情報に疎い。橋本愛という役者は顔も名前も知らなかった。しかし、佐藤二朗はXでとぼけたことをポストする俳優として認識していたため、興味本位でクリックしたのが間違いだった。以来毎日タイムラインにこの話題が現れるようになった。
この騒動の注目度は高いようで、1,000を超えるリポスト数のポストもよく見かけるが、だいたいは偏った意見で語気も荒いものが多い。Xでは過激な論調の方が支持されるから、当然と言えば当然だ。
私はどんなバックグラウンドを持つ人間がこういうポストをしているのだろうとプロフィールを見たが、素性が知れないことが度々あった。
誰だか知らないが、自分が言い辛いことをよく言ってくれた、なのか。はたまた、なんでもいいから推している俳優に有利な情報を拡散したい、なのか。拡散する人たちの心理はわからない。
わからないが、どこぞの馬の骨の鼻息が毎日拡散されていく。
そこでふと気になった。
私よりも若い人たちは、発言者の身元を確認するという作業をしているのだろうか。
家に新聞がある時代に育ったのがどの年代までかは知らないが、一人暮らしを始めるまで実家は新聞を取っていたから、私は新聞世代だ。
新聞にはキャラがあった。朝日や毎日はリベラルで、読売や産経は保守だった。
新聞も商売だから、どんなニュースでもキャラ設定に沿った報道をしていた。朝日新聞の読者はリベラルなのに、急に保守的な見解を書くわけにはいかない。新聞が売れなくなるからだ。リベラルな人が喜びそうなことを朝日は書いた。読売ならその逆だった。
朝日をやや右に、読売なら逆に補正して読み、なんとなく真実を想像するというのが良識で、それは同時に大人ならば世の事象に一つの正解など無いと知っているということでもあった。
ところが、有象無象のポストが手当たり次第リポストされる現代では、その身元調査がされているようには思えないのだ。
思想が商売であるという点では、新聞も現代のインフルエンサーと変わらない。新聞は思想を持つことで読者を獲得し、インフルエンサーはフォロワーを得る。
違いはプロフィールを調べる必要が有るかどうかだ。