笑わなかった日本代表、笑えなかった三菱電機
先週末、女子3x3世界最高峰ツアー「ウィメンズシリーズ」のレギュラーシーズン最終戦高崎STOPが行われ、我らが日本代表は今シーズン初の2位に輝いた。
準決勝のオーストラリア戦は日本代表の良さがすべて出た好ゲームだったが、個人的に興味深かったのは三菱電機との準々決勝だった。
日本代表と三菱電機の関係は複雑だ。
ロス五輪という観点から見るとこの2チームは同志と言っていい。両チームが稼いだポイントが日本の五輪出場に直結するからだ。
ところが、ウィメンズシリーズという箱の中では競争相手である。
さらにその関係を面白くしているスパイスがある。
日本代表はナショナルチーム、三菱電機はコマーシャルチームという枠で出場しているのだが、制度上コマーシャルチームの方がSTOPの割り当てが多い。
三菱電機は今季10STOPを戦ったが、日本代表が参加したのは7STOPだった。当然ポイントは三菱電機の方が稼ぎやすい。日本代表は代表の名を冠しながらもランキングで三菱電機に後れを取っていた。
これまで両チームが揃って参戦したのはマニラと東京の2STOPだった。マニラではともに予選で連敗し二日目に進めなかったが、総得点の差で三菱電機は10位に、日本代表は最下位の12位となった。東京でも、やはり三菱が上の2位、日本代表は3位に甘んじた。
その2チームが初めて直接対決したのが、レギュラーシーズン最後の高崎STOPだった。
「順位とか見ても三菱の方が上になっているし、大会の結果とかも三菱が上の2位とかになっていて、すごく悔しかったので、私は絶対、この試合勝ちたかったです(※日本代表は高崎STOPが今シーズン初の2位入賞。三菱は東京とバンコクで2位に入っている)」
試合後に高橋未来が語った通り、日本代表のモチベーションは高かった。
しかし、三菱電機にも負けられない事情があった。三菱電機は、この大会で3位以内に入れば、9月5日、6日に上海で行われるファイナルの切符を手にすることができる位置につけていたのだ。
今シーズンはかなりの時間を女子3x3の取材にかけてきたが、そんな私にも試合の予想は全くつかなかった。
シーズン中、先にチームのスタイルを作り上げたのは三菱電機だった。ハンドラー二人とロールマン二人という構成のため、トランジションが抑えられても必ずピック・アンド・ロールに持っていくことができる。また、澤知央、山本遥香がロールに徹するので、混乱が少ないのも強みだ。
一方の日本代表はチームビルディングに時間がかかった。昨シーズンは3x3歴が長い桂葵と鶴見彩が引っ張っていたが、今シーズンはまず桂がアゼルバイジャンの強豪ネフチ・ソカールからのオファーを受け、海外挑戦のために代表を離れることになった。鶴見は最初の2STOPでディフェンスを狙われたことと、同じガードの高橋未来の台頭が重なり出場機会が激減した。自然と3x3歴2年目の高橋未来と宮下希保がリーダーシップを取り、デビューしたての野口さくら、田中平和を引っ張る形になったが、その程度の経験値で簡単に勝てるほどウィメンズシリーズは甘くなかった。宮下は言う。
「最初は自分の言葉にも自信がなかったし、有香さん(前田有香ヘッドコーチ)のやりたいことも今思えば全然わかっていなかったので、5人制のときの感覚のままやっていたと思います。本当に最近になって少しずつ有香さんのやりたいことがわかってきたので、そこに対して『この4人ならこういうやり方の方が合うと思います』というような意見を言えるようになりました」
その成長がようやく結果として現れたのが8月頭の東京STOPだった。日本代表は準々決勝で強豪カナダを破る大金星を挙げた。
白状すると、私は女子バスケに疎い。Wリーグの試合には数回しか行ったことがないし、それぞれの5人制における活躍もスタッツしか知らない。だからこれは憶測なのだが、日本代表は個のタレントでは三菱を上回っているはずだ。今シーズンから韓国でプレーする野口以外の全員がプレミア所属だし、野口も昨シーズンまではプレミアでプレーしていた。その上野口には5人制の代表歴もある。プレミアとフューチャーの実力差、プレミア内でのチーム間格差がわからないまま言うのは申し訳ないが、ひとまずそう仮定させてほしい。
個の実力はあるもののチームビルディングの遅れた日本代表と、個の力を補うスタイルを作り上げ、磨きをかけてきた三菱の戦い。この試合をそうとらえることもできた。さらに日本代表は田中平和が5人制の活動で不参加だったため、急遽U23代表の花島百香をロスターに加えていた。ケミストリー面でまた振り出しに戻らないか。そんな不安も抱えていた。
一体どちらが強いのか。私は興奮を感じながら試合開始を待った。
ところが試合が始まると、割と早い段階で「これは日本代表が勝つのではないだろうか」という予感がした。
その予感をもたらしたのはフィジカルやドリブルといった個の力でもなければ、スクリーンやパスといったツーメンゲームでもなかった。
私がそう感じた理由は選手たちの表情にあった。